[2024年12月29日]「容ロ」と「嫌ロ」?
イラクリ・コバヒゼ首相がEU加盟交渉の2028年までの凍結を発表したのが11月28日でした。そして、約一ヶ月後の本日12月29日にミヘイル・カヴェラシュヴィリ氏が大統領に就任予定です。これに先だつ12月27日、米国財務省外国資産管理局が再生リストに与党ジョージアの夢党創設者で名誉議長のイヴァニシュヴィリ氏を制裁リストに追加しました。コバヒゼ首相はこの動きに対して、2022年以降、ジョージアを戦争に巻き込もうとする陰謀に抗してジョージアの国益を護ろうとするイヴァニシュヴィリ氏に対して非公式の制裁が機能しており、何も現状には影響がない旨表明したようです。昨日28日も市内では市民が手をつなぎ合って政権与党への抗議の意志を表明したと報じられています。
このように、強い緊張状態が続く現地ですが、この間、日本では親欧米派対親ロシア派の対立のように報じられることが多かったように思います。ただし、この図式にはやはり違和感が拭えません。たしかに、「欧米」側から見れば(そもそもこうした見方にも疑問符がつきますが)、自分たちにつくか、ロシアにつくかの二択という設定は、特にウクライナにロシアが侵攻している現状では妥当かもしれません。
ただ、たとえばですが、この対立を「容ロ派」対「嫌ロ派」の対立と置き換えるとどうでしょうか?現政権はロシアからの避難民を事実上自由に入国させ、ロシアとの航空機の往来も再開かつ頻繁となり、ロシアとのいわば通交に寛容ですが、国交は断絶したままで、EU加盟も目標から外したわけではありません。他方、ロシア帝国によりジョージア国・ジョージア人社会の発展が阻害されてきたという見方は、実にソ連時代から一般的であり、ジョージア(グルジア)が帝国の一部であった日露戦争の際にも日本への好意的な雰囲気が少なくともエリート社会でよくみられた(日本の勝利を祝う言説まで登場した)こともよく知られています。
「欧米」というフィルターをもう少し相対化してみれば、今のジョージアで起こっていることがもう少し身近に感じられるように思います。
それでも、もちろん、ジョージアと日本の置かれている立場も、また、ジョージア国内の様々な諸要因で日本と決定的に異なる社会要素も多々あります。そうした点についても今後、少しずつ記していきたいと思います。
写真はジョージアのカッパドキアことヴァルジア(ヴァルズィア)ვარძიაのフレスコ画。おそらく2000年夏の撮影です。当時から修復作業が行われていましたが、現在はだいぶ違う姿になっているでしょうか。
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